研究概要 |
スキー場を活用して「半自然草原の保全と再生」を実現するには,(1) 良好な半自然草原を維持しているスキー場の分布およびその自然的/社会的な条件の把握,(2) 好ましくない植生(牧草優占)をもつスキー場における半自然草原の再生手法の開発,以上の2点が必要である.本研究ではこの2点を目的として,兵庫県北部(但馬地方)のスキー場草原において植生等の調査と草原再生のための実験を行うものである. 21年度は,現地の植生とフロラの把握,およびスキー場の自然的/社会的条件の把握を重点的におこなった.調査対象地は,良好な半自然草原を維持している「アップかんなべスキー場」と,かつては半自然草原であったが現在は地形改変を全面的に受けて牧草優占となっている「ミカタスノーパーク」とし,植生およびフロラ調査を実施した.調査時期は夏季~秋季とした(春季は22年度に持ち越し).また,スキー場の来歴や管理手法を把握するために,聞き取り調査および地形図・空中写真の判読をおこなった. 調査の結果,全面的に地形改変を受けたミカタスノーパークでも,立木周辺など,局所的に地形改変を免れた箇所があり,そこに草原生の希少植物が残存していることが確認された.このことは,大規模な地形改変を受けたスキー場であっても,草原再生のソースが得られる可能性があることを示すものである.また,ゲレンデ内の植物の分布と,ゲレンデ管理の方法(特に冬季の雪面硬化剤散布箇所)との間に対応がみられる可能性が示唆された.このことは,ゲレンデのどの位置で優先的に草原再生をおこなうかを検討する上で有益な知見につながる可能性がある.雪面硬化剤の影響は,土壌環境の変化を通じて植生に及ぼされると考えられ,今後,詳細な分析が必要である. 21年度は,上記の調査と並行して,草原生植物の種子採取をおこなった.得られた種子は,22年度以降の実験に供する予定である.
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