研究概要 |
河北潟(石川県)の湖岸において、浮島状に広がったチクゴスズメノヒエ群落内の溶存酸素濃度測定と水生動物の定性調査を継続した。 2010年5月、6月、7月、10月の野外測定では前年の測定同様、チクゴスズメノヒエ群落内の昼間の溶存酸素濃度は必ずしも開水面に比べて低くはなく、水面直下ではむしろ群落内の方が高く保たれていることが確認され、チクゴスズメノヒエ群落では生育期間を通じて恒常的に溶存酸素濃度が維持されることが確認された。しかしこれらの測定結果はいずれも昼間の結果であり、夜間の群落内の溶存酸素濃度の動態は明らかではなかったことから、2010年7月8日-9日、9月4日-5日の2回、群落内の溶存酸素量の日周変化の測定を実施した。 両日とも昼間には群落内外共に10mg l-1を越える過飽和状態の溶存酸素濃度が記録され、特に7月9日の正午前後には群落内側(4m,2m)において日周の最高値が記録された。しかし両日とも夜間には群落内の溶存酸素濃度は著しい低下を続け,真夜中1:00頃には最低値(7月9日に3.48mg l-1,9月5日に1.82mg l-1)を記録した。群落内の値は明らかに同時刻の開水面の値より低く、これまで抽水,浮葉,沈水植物群落等で報告されてきたのと同様に,群落内の卓越した呼吸により貧酸素環境が形成されていることが推測された。河北潟で確認されたチクゴスズメノヒエ群落根系が好気的環境を維持すると言う特異な現象は、昼間に限った現象である可能性が高くなったといえる。チクゴスズメノヒエ群落の好気的環境の形成機構について、今後、実験条件下でのチクゴスズメノヒエ根系の酸素放出速度の測定により詳細に分析を進める予定である。
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