研究課題/領域番号 |
21510250
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
楠本 良延 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物多様性研究領域, 主任研究員 (30391212)
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研究分担者 |
稲垣 栄洋 静岡県農林技術研究所, 生産環境部, 主任研究員 (20426448)
平舘 俊太郎 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物多様性研究領域, 上席研究員 (60354099)
岩崎 亘典 独立行政法人農業環境技術研究所, 生態系計測研究領域, 主任研究員 (70354016)
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キーワード | 生態学 / 保全生態学 / 生物多様性 / 茶草場 / 半自然草地 |
研究概要 |
かつて国土面積の10%以上を占めていた半自然草地の減少が著しく、草原に依存する動植物が絶滅の危機に瀕している。そのような中で、東海地方の茶産地では、茶草場とよばれる半自然草地が存在し、貴重な草原性植物種群が生育している。静岡県掛川市東山地区を対象地では、茶園面積の約65%に達する広大な半自然草地が維持されている。さらに、鹿児島県及び神奈川県で植生調査・解析を実施したところ、静岡県と同様に種多様性の高い半自然草地が成立していた。静岡県おいて対象地の土地利用変遷と茶草場の在来種の種多様性を解析した結果、過去から土地改変が行われず、安定した立地で年一回から2回の刈取り管理で維持されている茶草場が良好な半自然草地であることが明らかになった。 茶草場の成育する草原性植物の種毎の成立・維持機構の解明を試み、出現頻度データと環境要因(土壌の化学性、土壌水分、光量子密度、斜面方位・角度、土地改変履歴、刈取り回数)を整理し二項分布を仮定したGLMにより分析を行った。その結果、(1)土地改変を受けていない刈取りにより長期間維持されている草地に生育する種群としてアキカラマツ、ワレモコウ、ツリガネニンジンが抽出された。さらに、(1)の条件に加えて大きな草原面積を必要とする種群としてオミナエシ、タムラソウ、トダシバが明らかになった。また、(3)どのような環境にでも成立可能な種群としてススキ、ミツバツチグリ、タチツボスミレが抽出された。茶草場に生育する植物の環境要因が種毎に明らかになった。 以上から、茶草場の事例は地域の野生生物資源を利用することにより茶生産が維持され、また、その茶生産が貴重な半自然草地である茶草場を守っている事実が明らかになった。また、茶草農法は里山資源を活用した高付加価値農業でありこれからの農業を考える上で示唆に富む事例であろう。さらに、茶草場は地域の文化形成にも寄与していることが明らかになった。
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