本研究では、オセアニア島嶼地域における開発や国際協力のあり方および方向性を、島嶼諸国の社会、文化、環境、近代への参入状況(貨幣経済とサブシステンス経済)などに目配りしながらさぐることを目的としており、2人の連携研究者(小林泉、野田真里)と共に次の研究活動をおこなった。 (1)資料収集:オセアニア島嶼地域の現代的諸課題を扱った文献を中心に収集し、同地域に固有の近代的状況についての考察を進めた(主として研究代表者の関根が担当)。 (2)学会等における発表および図書刊行:本科研費取得前から進めていた事前研究の内容と合わせて、研究代表者および連携研究者が併せて5本の発表を行い、2冊の図書(分担著)を刊行した。 (3)現地調査:セアニア島嶼地域における国際関係論研究に豊富な実績と幅広い島嶼人脈をもつ連携研究者の小林泉が、近年観光開発による経済発展の著しいパラオ共和国、およびオセアニア島嶼支援の拠点国であるフィジー諸島共和国、平成21年に我が国が在外公館を設置し、支援の強化が見込まれるトンガ王国における現地諸機関を訪れ、ODAの受け入れ状況や地域社会の変化の実態に関する調査を行った。特にフィジー諸島では、同国首相および外相との会談も実現し、島嶼国支援の実情と方向性について意見交換を行った。 我が国は定期的にオセアニア島嶼諸国との間で首脳会合(サミット)を主催しているが、同地域の開発、開発援助、近代化に関する研究の蓄積が木足しており、地域の社会文化的特性を踏まえた国際協力は十分とはいえない。本研究における成果をふまえた学会発表、図書刊行だけでなく、研究代表および連携研究者による外務省アジア大洋州局等との意見交接換会も実現し、総合的観点から初年度の活動に一定の意義を認めることができる。
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