本研究では、オセアニア島嶼地域における開発や国際協力のあり方および方向性について、2人の連携研究者(小林泉、野田真里)と共に次の研究活動をおこなった。 (1)現地調査:(1)2010年8月に14日間、ソロモン諸島国において実地調査を行った(研究代表者の関根久雄が担当)。ソロモン諸島は1998年から2003年まで続いた国内紛争後の社会復興に国民の関心は向けられている。その中で地方社会が独自の生業および現金収入源を確保する必要が強く叫ばれている。日本のあるNGOが復興支援の一環として2001年以来同国のマライタ州内で有機農業普及プロジェクトを進めている。同国では「職と食」の安定が社会秩序と密接に結びつく傾向にあるため、これに日本のODAも積極的な支援を続けている。今調査では、NGOプロジェクトの現状と成果について現地の人々に対するインタビューや現状視察を行った。調査後、調査結果を当該NGOに対して報告書の形式で示し、関係者とのディスカッションを通じてプロジェクトの改善の方向性などに関する提言を行った。 (2)2011年2月に15日間、ポリネシアのツバル国において実地調査を行った(連携研究者の野田真里が担当)。同国は環礁国であり、地球温暖化の影響を受け陸地そのものの存亡の危機にあるといわれ、現代における環境問題の象徴として世界各国から注目を集めている。我が国も太平洋・島サミットを定期的(3年に1回)に開催し、太平洋島嶼国を支援している立場から、同国への支援の強化を模索しているところである。今後のツバルの開発援助について、特に「人材育成と持続可能な開発」の観点から現地住民やODA関係者、現地政府関係者に対するインタビューを行った。 (2)成果の公表等:本科研費取得前から進めていた事前研究の内容と合わせて、研究代表者および連携研究者の小林泉が併せて4本の口頭発表を行い、2冊の図書(分担著)を刊行した。 (3)資料収集:オセアニア島嶼地域の現代的諸課題を扱った文献を、前年度分に捕捉する形で収集した(主として研究代表者の関根が担当)。
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