研究概要 |
本研究の目的は,発展途上国における農村開発の道筋について,コミュニティ内外の資源動員を可能にする「社会関係資本」活用の可能性を提示することにある。この研究目的を達成するために,中国の西部内陸地域に属する甘粛,雲南両省の農村において集中的な現地調査を実施する。さらに,両地点で得られたデータを相互に突き合わせ比較することにより,開発・公共建設において西部コミュニティの社会関係資本の果たしうる役割について,西部的な文脈における一つの理論的展望を示す。 平成21年度は上記課題の基礎固めの年度として,以下の(1),(2),(3)の活動を同時並行的に進めた。第一に,甘粛,雲南両地の『県志』,『郷志』,『村市』『地名志』,『共産党組織史資料』,『政治協商会議文史資料』,各種統計年鑑,档案資料などのいわゆる「地方性文献資料」を収集するとともに、政治学,社会学,農村開発,社会関係資本にかんする理論的文献についても最新の研究成果について補充し,データベース化を行った。第二に、甘粛省天水市麦積区,同省隴南市西和県において予備調査を行い,多数の村落を対象に、(イ)地理的条件(気候,風土,植生,地形,中心地への交通手段,集落分布など)、(ロ)社会的条件(集落の姓氏構成,宗族組織,民族構成,各種民間組織,家族構成など)、(ハ)経済的条件(土地経営,農業経営,郷鎮企業,農家副業,出稼ぎなど)、(ニ)政治的条件(自治・行政組織,党組織,村リーダー構成など)の概況に目を配りながら、それらの村の中から今後の「固定観察ポイント」となる村の選定を行った。なお、種々の事情から雲南省宣威県における予備調査は年度内には実施できなかった。第三に,文献調査,現地予備調査の進展度合いについては、代表者、分担者の間で随時連絡を取り、問題意識の再調整と統合に勤めた。
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