研究概要 |
本研究の目的は,発展途上国における農村開発の道筋について,コミュニティ内外の資源動員を可能にする「社会関係資本」活用の可能性を提示することにある。この研究目的を達成するために,中国の西部内陸地域に属する甘粛,雲南両省の農村において集中的な現地調査を実施する。さらに,両地点で得られたデータを相互に突き合わせ比較することにより,開発・公共建設において西部コミュニティの社会関係資本の果たしうる役割について,西部的な文脈における一つの理論的展望を示す。 平成22年度は、初年度において予備調査を行った村落について現地調査を全面的に展開し,甘粛農村(8月)および雲南農村(3月)、予備として貴州農村(8月)における公共建設と村落の社会関係資本をめぐる地域的特徴というものを丹念に掘り起こす作業を行った。その際に,参与観察法,幹部や村民への聞き取り,さらに必要に応じてアンケート,歴史資料の参照など,コミュニティ・スタディで用いられる方法を駆使した。中でも中心的な手法は参与観察法であり,(1)調査地で現在進行中の水利・道路建設その他のコミュニティ公共建設の決定,資金調達,実施のプロセス,とりわけ(2)そこに見られる村幹部のリーダーシップや村民の事業への参加状況,および村民小組長や出稼ぎから帰郷した人材など,諸アクターの相互連関の観察・記録を行った。さらに、過去に実施されたコミュニティ公共建設についても,その一つ一つについて関係者に詳細な聞き取りを行った。こうして集められた現地調査の記録は映像資料と共にコンピュータに取り入れ、すでにデータ・ベース化を済ませている。
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