研究概要 |
本研究の目的は、発展途上国における農村開発の道筋について、コミュニティ内外の資源動員を可能にする「社会関係資本」活用の可能性を提示することにある。この研究目的を達成するために、中国の西部内陸地域に属する甘粛、雲南両省の農村において集中的な現地調査を実施する。さらに、両地点で得られたデータを相互に突き合わせ比較することにより、開発・公共建設において西部コミュニティの社会関係資本の果たしうる役割について、,西部的な文脈における一つの理論的展望を示す。 最終年度に当たる今年度は、甘粛、雲南とも八月に、前年度までの調査地での追跡・補充調査を実施した。同時にコミュニティ公共建設と社会関係資本をめぐる「地域間比較」の視点から、以下の四つのレベルを意識した理論化作業に着手している。すなわち、(1)甘粛,雲南両省内で選択した複数コミュニティ間の比較、(2)同じ西部内陸地域に属する甘粛と雲南両省の比較、(3)先行する研究成果から得られた北京、山東(東部沿海)、湖北、江西(中部内陸)と本課題の西部内陸農村の比較、そして(4)他の途上国と中国との比較である。 以上の内,(1),(2)のレベルについては、まだ今後の課題となる部分が多い。目下のところ、同一省内のコミュニティ,あるいは同一の西部地域に属するコミュニティが,平地と山地の違いや交通条件,農村経済などとの絡みにおいてどのような社会関係資本の条件下にあり,また外部資金へのアクセスにおいてコミュニティの社会関係資本がどのように絡んでいるのか,これらの点での分析を進めているところである。いっぽう、(3)、(4)のレベルについては、田原史起「『地域を突き抜ける』地域研究」(業績一覧参照)において初歩的なアイデアを提示することができた。
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