1949年の中華人民共和国成立以来、1950年代後半からの集団化と1960年代後半からの文化大革命、1980年代からの改革開放路線となど中国社会は何度も大きな社会変化を経てきた。本研究は、このような中国の政策・社会変化の中で、中国西南端の雲南省に居住する少数民族ラフ族は、その生活がいかなる影響を受け、どのような変化を遂げてきたかを、文献研究とフィールドワークから明らかにするものである。より具体的にはラフ族住民への民族語(ラフ語)による聞き取りをもとに、人びとの生活史を再構成し、住民がそれらを生活レベルでどのようにとらえ、どのように対応してきたかを再検討する。より具体的には、本研究は(1)中国の国家政策および民族政策の検討、(2)各時代における少数民族ラフの生活の変化の調査研究、(3)ラフ族住民による自らの過去についての語りに反映される周縁民族の社会的経験の検討の三点を軸に展開してゆくものである。 平成24年度前半には(1)の、解放後中国の国家政策および民族政策の変遷に関わる文献・資料の収集・整理・分析と平行して、(2)(3)の調査研究のため、2012年04月01日から08月11日まで中国雲南省瀾滄ラフ族自治県にてフィールドワークを実施した。 平成24年度後半は、フィールドワークによって得られた1.中国雲南少数民族の生活誌、2.解放後中国の社会変化を少数民族住民はどう生きたか(社会史)、3.漢族とラフ族女性の遠隔地結婚の現象、4.タイと中国のラフ族の祭祀体系、5.祭祀空間の変容、6.ラフ族の「佛」運動と信仰(宗教運動)、7.タイと中国における山地少数民族のキリスト教について、データ整理をおこない、このうち2.3.6.を中心に、最終報告書『雲南少数民族の生活経験の変化―解放後中国の社会変化をラフ族住民はどう生きたか』(2013年03月31日、全138ページ)を作成した。
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