2011年3月現在、スペインのバスク自治州政府が公認する在外バスク系同胞コミュニティ「バスクの家」は24か国で173を数える。そのうち79がアルゼンチンに、37が米国に拠点を置き、アルゼンチン・バスク系団体連盟(FEVA)と北米バスク人機構(NABO)にそれぞれ結集している。両機関の年次総会への陪席を通して、以下の知見が得られた。 まず、FEVAとNABOは以下の共通点を有する。(1)バスク自治州政府の公的支援を受ける以前から活動してきたこと。(2)スペイン領4県とフランス領3地方からなる広義の「バスク地方」をホームランドと見なしていること。(3)「バスクの家」のメンバーシップ要件から血縁を排除したこと。(4)とはいえ、メンバー間の交歓においては、地縁と血縁が依然重要であること。(5)メンバーの多くが、在外スペイン系/フランス系同胞の団体にも加入していること。 反対に、両者には次のような相違点も確認された。(1)FEVAが政治的言動を容認するのに対し、NABOはそれを禁じていること。(2)NABOの主体は移民第1世代から第2世代に移行中だが、FEVAの場合はさらに世代が下ること。(3)メンバーの当該国における社会的地位は、FEVAの方がNABOよりも全般に高いこと。 一方、バスク自治州では、2009年5月に初の非バスク・ナショナリスト政権が発足し、在外同胞支援における「バスク色」を希釈する方向性を公言している。主な論点は、(1)ホームランドはバスク自治州、(2)バスク自治州の対外経済活動に対する「バスクの家」の貢献、(3)バスク語文化の振興を、スペイン語文化の対外普及機関であるセルバンテス文化センターとの運携において実施、の3点に要約できる。 在外バスク系コミュニティの意向に必ずしも沿わないこれらの論点は、2011年11月に自治州政府が主催する、「第5回世界バスク系コミュニティ会議」において議論されることとなろう。
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