1. 民族文化観光を文化的資源として分析する サンブルの人びとが観光地で出演している「マサイ・ダンス」をビデオ収録したもの(約10時間分)をもとに、舞台セッティング、踊り方、歌詞、曲構成、時間、衣装、人数、フォーメーションなどについて、故郷でおこなわれているダンスとの比較を試みつつ分析した。故郷では即興で歌われる歌詞が観光用のダンスでは定型化している点は大きな相違点であった。観光用のダンスに関する語りも収集し、人びとにとっての観光用ダンスの位置づけを明らかにした。また、観光用に販売している装身具と故郷で人びとが実際に身につけている装身具(Nakamura 2005)とを比較することにより、売るためにほどこされている工夫や改変、また、色使いやデザインの傾向を分析した。観光用には観光客の好みに合わせて故郷では用いられない色の組み合わせが積極的に採用されていたが、この傾向が故郷のデザインに部分的に影響を与えていることが明らかになった。 2. 「マサイ」イメージ-「白人」イメージの創出と再生産の現状の解明 植民地期以前からの旅行記、植民地行政官の記録、歴史文献、および、現在、流布している「マサイ」に関する表象を、本、映画、観光パンフレット、インターネットなどから収集し、その表象のされかたを分析し、それは過去からどのように変化しているのか/いないのかを明らかにした。また、学部学生約500人を対象に「アフリカ」イメージと「マサイ」イメージに関するアンケート調査を実施し、日本における「マサイ」イメージの傾向を分析した。また、その後、実際にサンブルの青年に観光業に従事した経験や現在の生活、世界情勢についてどう考えるかなどについて講演をおこなってもらい、彼らがもっていたイメージがいかに打破されたのか/されなかったのかについて、再度、論述形式のアンケートを実施することにより明らかにした。
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