1.香港・中国で予備的調査を行なった(12月8~13日)。 香港ではエスニック・レストランを中心にインドネシア華人出身者へのアクセスを試み、二カ所でインタビューに漕ぎつけることができた。1950-60年代にインドネシアを出国し、中国経由移住してきた世代から香港生まれの第二世代に重心が移っていること、彼ら第二世代も「香港人」意識と同時に「インドネシア華人」の出自意識を持っているらしいこと、家庭内言語としてインドネシア語の運用能力を保持していることなどを、限られた事例ではあるが確認した。 中国では日程の制約上、当初予定していた福建でなく香港と至近距離の広東省広州市を訪れた。中山大学および曁南大学の東南アジアないし華僑研究の専門家と面談し、インドネシアとの人の往来とりわけ留学生の状況について基礎的な情報を得た。 2.インドネシア・シンガポールで第1回本調査を行なった(12月24日~1月2日)。 インドネシアのジャカルタでは、スカルノ政権時代からの古参ジャーナリストらと面談し、華人社会にみられたさまざまな政治的潮流の思想基盤について意見交換を行なった。スマランでは旧知の華人コミュニティの人々のライフ・ヒストリーに関する聴き取り調査を行なった。インドネシアの両都市およびシンガポールでは文献収集も行なった。1960年代初期に活躍した「同化主義者」故・オンホッカム博士の若年期の著作物が没後まとまって出版されており、目下分析中である。 3.ポスト・スハルト期の華人知識人の政治的言説に関する最初の論考(裏面参照)を執筆・刊行した。華人性(華人の集団性や文化的独自性)の尊重に重点を置く全国的組織(PSMTI及びINTI)の指導者たちが同時に、「生まれ育った地インドネシア」への場所愛に基づく祖国観を有していることなどを実証した。
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