研究課題
平成23年度の主な目標として、既に収集した資料に関しては、本研究分析のフレームに基づいて分析し、原稿を執筆した。また、補充収集についても順調に実施することができ、朝鮮半島政策における重要懸案での日本政府の立場と米国の影響や介入を把握することに焦点を置いた。分析および執筆の対象となった重要な懸案は、在日朝鮮人の北朝鮮への送還をめぐる日韓の葛藤およびアメリカの立場と役割、日中関係正常化の前後期の日・米・韓・朝におけるダイナミックな関係の変化、歴史認識と歴史教科書をめぐる日韓不調和に関することなどであった。その結果明らかになった点は、日本の対朝鮮半島政策がアメリカの影響力からある程度自主性を持っていたこと、アメリカの介入方式は基本的に自国の大戦略であるソビエト封鎖に関連しており、その上で圧力とか説得とかの選択をしたことなどである。本研究では、進行過程で可能な限り、国際学会でその内容を発表し、フィードバックを受けることに努めた。その一つとして、平成23年4月初めにホノルルで開催された「アジア研究学会」で在日朝鮮人の北送に関する論文を研究の初期段階のものとして発表した。また、韓国の外交通商部傘下の外交史料館で、不足しているデータの取得に努めた。30年ぶりに公開された1980年の外交史料の中でも、特に韓・米関係、日・韓関係と日・朝関係などに関する資料を重点的に収集した。そして、日本の対外政策全般、日・韓関係、日・朝関係に関する国内所蔵資料と、データベース化された海外誌の資料を国会図書館にて補足収集した。
2: おおむね順調に進展している
分析のフレームに基づいて既に収集した資料を分析して原稿を執筆することができた。また、「アジア研究学会」での論文発表とそこでのフィードバックは、原稿を執筆する上で非常に良い刺激となった。
本研究課題の今後の推進方策については、既に作られた分析のフレームに合わせて、日本の対朝鮮半島政策におけるアメリカの変数を分析することに重点を置く。アメリカの変数の分析で重要なのは介入の方式と言えるが、懸案の重要性と状況に応じて、その介入方式が異なることに注意する。冷戦期間中は、日・米・韓の三角関係が存続したため、日本の対朝鮮半島政策や日韓関係におけるアメリカの介入方式は、単純にパワーだけに依存するよりは、道徳主義的に訴えたり、国際法への呼びかけなど、様々なアプローチと組み合わされている°どのような場合にどのような介入方式を取るようになるかが、重要な分析の焦点である。分析のテーマの一例を挙げれば、1950年代末、在日朝鮮人の北送政策および推進政策において、アメリカの動き(一つの介入の種類として)がなければ不可能だったものがあり、アメリカは当時の東アジアの国際政治状況を考慮していたことはもちろん、日米安保条約の改正という重要な懸案があったために、日本の国内政治に及ぼす影響までを考慮して介入の方式を調整したものと考察する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Peace and Unification Studies
巻: Vol.3, No.2 ページ: 130-172
Hiroshima Research News
巻: Vol.14,No.1 ページ: 6-6