研究初年度は、中央アジアのカザフスタン(アルマトイ)・キルギス共和国(ビシュケク)・ウズベキスタン(タシュケント)の三国に赴き、それぞれの地のウイグル人コミュニティで民族組織の結成経緯と活動内容、組織メンバーや発行刊行物などについてフィールドワークを行った。 また、マレーシア(クアラルンプール)では、中華民国の官僚として国民政府崩壊(中華人民共和国・中国共産党政権樹立)後、台湾へ渡ったウイグル人の古老・アブドゥッラ氏の娘への聞き取り調査を行った。さらに同国で、UNHCRに難民申請をしている政治亡命者のウイグル人数名に会って、亡命に至る経緯を聞き取りした。 本来、パキスタンとアフガニスタンのウイグル人コミュニティを訪問したかったのだが、安全上の問題が当面解決されそうにないため、両国に長く滞在経験のあるウイグル人を訪ね、その2国に於けるウイグル人の活動状況を聞き取ることにした。パラオには、9・11事件直後、この2国に於いて米軍に拘束され、グアンタナモ基地に送られたウイグル人22人のうち6人が「一時滞在」を許され生活している。彼らの個々の経験を聞き取った。 日本では、国内で収集できるウイグル語・漢語・ロシア語などの関連文献を収集することに務め、現在それらの翻訳作業を続行中である。 最後に。中国に文献資料収集に赴く予定であったが、(私の現在行っている研究内容が、中国政府にとっては大変敏感な問題であるせいであろう)入国拒否に遭い、この研究は中国国内での資料収集は不可能であると断念した。
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