(1) 1950~70年代の在外ウイグル人亡命者に関する公文書調査の結果は、以下の通り。中国共産党との内戦に敗れ台湾に渡った中華民国政府は、(1)国連へ新疆を脱出したウイグル人亡命者保護を強く要請し、自らも相当な経済的援助を行っていた(2)ウイグル人在外亡命者組織と中華民国政府は「反共」(反中国共産党)というイデオロギー的結束で、1960年代までは深い繋がりを維持していた(3)蒋介石の死後、特に中華人民共和国が改革開放に舵を取ってからは、両者の往来が消失する、等、これまで知られていない中国国民党とウイグル人亡命者の結びつきが、台湾に於ける文献調査により明らかとなった。(2)中央アジアでの現地調査の成果は、以下の通り。(1)「カザフスタンのウイグル人」については既に幾つかの先行研究が存在するが、「キルギス共和国のウイグル人~そのコミュニティ、民族組織、ウイグル語メディア等~」について言及する論考は存在しなかった。本研究によって、キルギスのウイグル人社会の全容が明らかとなった。(2)「東トルキスタン共和国」時代に政府中枢に比較的近い部署にいて、その後、中央アジアに移住し、民族組織に関わってきた人々にインタビューすることができた。とりわけ、「東トルキスタン共和国」時代に政府公報に勤務し、漢語文献の翻訳やメディア工作に従事したムニール・イェルズィン氏へのインタビュー記録は、他に類例のない貴重なものである。
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