当研究では二つの課題に取り組んでいる。一方は、将来的な、また日本全般に及ぶ事柄である小中学校、高校の理科教科書問題である。現行の教科書は、記述内容(扱う野生生物種、地域)が中央(東京・大阪)を主としたもので、特に北海道と沖縄県の児童生徒には不公平な状態にある。このような状況にあることを具体的なデータを示しながら地域の小中学校教員(西表島の小中学校)、教育委員会(竹富町、中城村)に説明した。関連した教育活動として、地域児童・生徒・一般を対象に、マングローブ植物、ソテツの生活史〓について授業を行った。教材作成にも力を入れ、西表島に生育する植物の生活史、開花過程を動画にし、インターネット公開をしている。これは英語版も作成しており、国際的に利用されている。 他の研究課題は、西表島に飛散する酸性雨原因物質の測定と、これに関連する土壌の酸性度を扱ったもので、これらは、地域限定的な具体的な研究といえる。降下物の測定は、島内の二か所に測定器具を置き、毎月定期的に試料を採取し、分析先である九州大学(共同研究先)に送っている。原因物質は主に大陸から飛来すようであるが、これを安定同位体の比較測定から明らかにしつつあるが、量の推移をもあわせて調べている。土壌については22年度に、西部の遊休地、耕作地からこれを採取し、酸性度を測定したが、2-3年おきの継続調査から、酸性雨原因物質の将来での影響を推測することにしている。また、耕作地の酸性度の結果は耕作者に伝えるが、必要に応じて土壌改良の助言をすることにしている。
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