研究概要 |
自然環境の保全には地域住民が地域の自然環境について、より知識を深め、誇りを持つことが重要である。また、住民の生活基盤となる経済的な自立も必須である。このような考えの下に研究を展開した。西表島は世界的に希な湿潤亜熱帯気候区にあるが、森林域からサンゴ礁域まで連続した生態系を有している。これまで農耕地からの土砂の流失が問題視されていたが、近年は豪雨により山地の至るところで崩落が生じ、これによる生態系の劣悪化が進んでおり、早急に対処しなければならない。一方、産業面では、主要産業である観光が,来島者の減少で衰退化しつつある。この状況は、ある意味で、自然環境に負担のかからない環境教育を取り込んだ滞在型観光を進展させる良い機会と言える。 植物学、ウミショウブを主としたウミクサ類の生活史の研究と水文学、水循環を解明するための河川水量の推定および雨水の酸性度の測定と酸性雨の原因解明件研究、の継続研究を行った。23年度には、海浜植物であるヒメキランソウとクロイワザサを用いての表土流失防止実験も始めた。ウミクサ類の研究成果は地域の理科教材、観光ガイドプログラムとして活用している(ウェブサイト、西表庵植物園を参照)。河川水量の推定を当研究の成果として、とりまとめを進めている。酸性雨の原因物質が中国大陸起源であることを確認したが、他のアジア地域からの可能性も示唆した。酸性雨原因物質は年間を通して飛来することも明らかにできた。農業、畜産振興の援助になるように、土壌酸性度の調査をしたが、測定データを基にした土壌状態の説明を各サンプル提供者に行うことにしている。表土流失防止実験は、特にクロイワザサを用いた実験は、有望で今後も継続して進める。
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