3年間の研究成果のまとめとして、パートタイム労働を含めた日本の雇用システムの理論化を試みた。日本の雇用システムでは、正社員には「職能ルール」が適用され、パートタイム労働者にはあらかじめ仕事を特定化するという意味で、「職務ルール」に従う雇用区分が設計されながら、実質的にはパートタイム労働者にも職務の境界をあいまいにしたり、組織への貢献を重視するといった「職能ルール」の要素が取り込まれている。パートタイム労働について、内在的に機会主義を抑制する雇用ルールが確立されていないことが、日本の雇用システムの特徴だといえる。そして、パートタイム雇用について、内在的に機会主義を抑制する雇用ルールが確立されていないということが、パートタイム雇用の処遇を低位にしている。こうした日本の雇用システムへの理解が進んでいないため、日本の雇用システム自体を見直していく、もしくはシステムに合わせた非正規雇用への規制を検討する動きが起こらず、むしろパートタイム労働者の処遇を低位にとどめる日本の雇用システムをより強固にする取り組みが行われている。このことが企業や労働組合でパートタイム雇用の重要性が増している一方で、処遇改善が進まない状況を生み出しているといえる。
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