人間の安全保障が対脆弱国家支援の領域でも積極的に議論される中で、国家安全保障と強く結び付けられ進められているという特徴が指摘できる。人間の安全保障が意図した、個々人の尊厳やジェンダー平等よりもむしろ、政治的要因(援助国にとっての被援助国の政治的存在理由)が優先される傾向が強まっているとさえ指摘できる。日本の援助動向は、他のドナー国よりも政治的に排他的ではないという特徴を持つといえる。これは人間の安全保障の概念に沿った援助を実践するうえでの強みであり、可能性であると考える。しかし、社会的格差(本研究ではジェンダー格差を縮小するような支援に着目)へは、取り組み強化が不可欠である。
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