21年度に予定されていた研究計画のうち、ソウルにおける文献・資料調査の一部を22年度に繰り越した。その結果概要以下の知見が得られた。 行政課題の近年の変化にともなって、政策の形成・実施の過程ではアクターの多様化がみられる。多様な問題に対応するために必要な情報・知識・手段を、政府が単独で保有することは困難であるからである。特に韓国では、民主化以降多数派政党のバックを持たない大統領が、改革路線を実行するためにNGOに政策の場で重要な役割を担わせた。 またNGOは、民主化を担った重要なアクターでもあったが、民主化以後も積極的に政策提言を行ってきた。特に女性政策においては、女性省(女性部)の設置など政府も力を入れ、女性NGOの運動も活発であった。女性の人権に関わる政策は、民主化以後の新しい政策の中でも最も大きな成果を獲得したといえる。その結果、国連が発表しているGEM(Gender Empowerment Measurement)は、90位台から50位台に急上昇した。 政治的・社会的な影響の及ぶフィールドにおいて、多様なアクターによる絶えざる議論、情報共有、異なる意見・立場のダイナミックな相互作用のプロセスがあるところで政策革新が実現すると言われるが、韓国の女性政策では、女性NGOは女性部長官(女性省大臣)と公式にも会議を持ち、戸主制廃止など種々の女性の人権関連の政策に大きな影響を与えた。女性団体は、情報テクノロジーを手にしばしばネットワークを組み、全国組織による運動等を展開して、影響力を強め、その主張を政治的アジェンダに転換した。 ◇前年度を中心に実施した地方の女性政策における行政一市民関係について、2009年6月に次ページの通りまとめ刊行した。 ◇DV防止法制定・改正過程の日韓比較については、2010年3月ディスカッション・ペーパーにまとめた。
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