22年度は、21年度に引き続いて文献・資料調査を行い、さらに、経済正義実践市民連合総務チーム責任者と、韓国女性人権振興院院長にインタビューを行った。その結果概要以下の知見が得られた。 ・NGO「経済正義実践市民連合」は、民主化以降文民政権のもとで政策の中枢に関わっていたが、市民団体としての活動と政権に密着した活動との間に乖離が生じることもあった。そのため、高級官僚や国会議員になる場合は、数カ月前に団体を脱退する規定が設けられている。 ・保守政権となって、民主化後の10年には政策の重要なアクターであった「経済正義実践市民連合」は、企業等の寄付金を政府に禁じられ、その規模も影響力も大幅に縮小している。一般にNGO活動は活発な面もあるが、「ロウソク集会」以後保守政権は批判的なNGO活動を抑圧する傾向にある。総じて政権に異を唱えない保守的なNGOに取って代わられている。 ・保守政権が廃止しようとした女性家族部は、各方面の廃止反対にあって女性部と規模を縮小して存続した。しばらくして再び女性家族部に復帰した。韓国女性人権振興院院長によれば、女性省だけでなく、官僚制の内部の各部署にも、また様々な公的機関にも、女性平等化を推進すべく配置されている担当者がいる中で、廃止は無理である、そうした配置は、これまでの女性運動と政策によってメインストリーム化が進められた結果であり、ジェンダー平等政策のメインストリーム化の勝利である。 政策形成・実施過程でアクターの多様化が見られるのは先進国にほぼ共通した傾向であるが、どういうアクターがどのようなプロセスを経て政策に関わるのかは、あまり問われていない。政策の場に関わる市民(団体)の選定の仕方や、市民団体内部の意思決定のあり方がどのようなになっているのかについても、民主的手続きと透明性が求められる。
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