「やりがい感」があれば家庭・地域からの退職圧力に屈することなく就業を継続するかとの問題意識から質的調査を行った。場所は広島(フォーカス・グループ・インタビュー、損保業界4社、一般職、6名)と新潟(ヒアリング調査、大卒女性、12名、半構造化ヒアリング、スノーボール方式)である。 広島調査では具体的にQ1「仕事のやりがい感」とは何か、Q2仕事が継続できている要因は何か、Q3夫婦の話合いの実態について質問した。一般職女性は同期入社の男性に比べると低賃金であるが、顧客と直接向き合い保険の交渉といった面倒な仕事をしている。しかし実際的に重要な仕事は男性がもっていく。総合職転換制度もあるが地域ブロックで毎年数名と狭き門でもあり「やりがいは感じられない」。しかし営業の仕事をしている以上、モチベーションを維持することは必要である。そこで、目標をたててクリアできた時は、男性上司にディナーをご馳走してもらう、といった戦略をたてていた。 他方、新潟調査では、20代大卒女性を中心に仕事の定着要因と継続要因に仕事のやりがい感がどのように関連するか調査した。753現象といわれる中、初職定着にはやりがいより「仕事を通した成長を感じる経験」(トラブル処理がうまくできた、引継を通して成長感を実感、業務関連資格を取得して自信がついた、この仕事は自分にあっているという適職感)であり、それがなかったり希望と現実とのギャップ(契約まで担当させてもらえない)が埋まらない場合には定着を阻害するようであった。他方、4年目以降の継続要因には「自己啓発、経済的自立、配偶者の支援や使命感」が影響をあたえ、やりがいがあれば継続就業するという仮説が明確に支持されたケースは少なかった。両地域の質的調査から、やりがいがあることは継続就業の必要条件ではあるが十分条件ではないことが明らかになった。
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