幼稚園や保育所の教師の勤続年数は短いことが知られている。幼稚園の先生や保母さんは、日常的に働く母親を支援する一方で、自らは育児休業を活用することなく妊娠や出産と同時に労働市場から退出する。その姿をみて、自責の念にかられる母親も少なくない。なぜ、幼稚園の先生や保母さんは妊娠&出産と同時に仕事を辞めるのか。この点について、ヒアリングを重ねた。そこでは、妊娠・出産後も未就学児を相手に仕事をすることは肉体的に厳しいこと、自らの子どもを勤務先保育園や幼稚園に預けることが出来ない場合が多いこと、希望すれば復帰する場所は多いと考えていること、復帰時の雇用形態は非正社員となるケースが多いが、その際の「機会費用」を極めて低く見積もっていること、などが明らかになった。 そこで、「機会費用」という概念に注目し、全国の20-34歳の正社員として働く男女雇用者1600人を対象に、インターネット調査(繰越申請済)を行った。その結果、男女ともにパート復帰した女性の機会費用を「1億円以下」とするものが6割と過半数を占め、かなり低く見積もっていること、女性の機会費用は2億円を超えるという事実を伝えた上で、どのような働き方を希望するか尋ねたところ、女性(妻)に継続就業を希望する割合は、女性より男性で増分が大きいこと、などが明らかになった。 機会費用については、すでに「平成9年国民生活白書」で数字として明確に示している。「機会費用」という概念について学校教育でとりあげ、その事実を知った上で女性たちが生涯でみて就業とどう係わっていくのか、関わり方を考えるような環境を整備することが必要である。
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