研究課題/領域番号 |
21510284
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高橋 桂子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50311668)
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キーワード | POS(知覚された組織サポート) / OCB(組織市民行動) / 仕事に対する積極的態度 / 転職意思 / 女性雇用労働者 / モデル / 共分散構造分析 |
研究概要 |
本年度は、過去2年間の研究知見や女性雇用労働者に対象に継続して実施しているヒアリング調査結果をもとに、仕事の「やり甲斐感」ではなく、仕事に対する「積極的態度」と「転職意思」を従属変数とし、「POS」(知覚された組織サポート,Eisenberger et al.1986)概念に注目し、POSがこれら従属変数にどのような影響を与えるか検討した。 具体的には、「意思決定への参加」、「公平な成長の機会」と「上司からのサポート」などがPOSを高め、POSが高まることで「組織コミットメント」にプラスの影響を与え、仕事と家庭の葛藤があると「組織コミットメント」にマイナスの影響を与える。前者は「仕事に対する積極的態度」を高め、「転職意思」を下げるが、後者は下げる、というモデルである。調査対象は、新潟県内11社、配布192枚、回収112枚(回収率52.6%)、調査対象は34歳以下の女性雇用労働者である。 共分散構造分析(AGFI=.818)により検討したところ、「意思決定への参加」、「公平な成長の機会」がPOSに与える影響よりも「上司からのサポート」が与える影響が大きいこと(β=.44)、「同僚からのサポート」などから構成される「職場風土」が「組織コミットメント」に与える影響より、POSが与える影響の方が大きいこと(β=.39)、「組織コミットメント」が高いほど、転職意思は有意に低下すること(β=-.76)、などが明らかになった。 この結果が頑健なものかどうか確認する目的で、高橋が過去に実施した独自データを用いて、仕事と家庭の葛藤が転職意思に至る影響について同様のプロセスモデルで検討を行った。その結果、男性では仕事と家庭の葛藤が転職意思を有意に高める結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の予定通り、POS、OCBや「組織コミットメント」変数を組み込んだ独自分析モデルを構築し、アンケート調査を行った。ヒアリング調査は初年度から継続して実施している。年度当初の予定では、調査対象者は子なしの既婚女性の予定であったが、かえってサンプルセレクションバイヤスを発生させてしまうと考え、「35歳以下の女性雇用労働者」として実施した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は今年度で完結し、来年度は学会報告、論文執筆の年として位置づけている。 女性がなぜ第一子出産で7割が退職するのか。制度が整備されていても、仕事がおもしろいと思い、仕事に飲めり込む状況になければ、社会的風土に流されて安易に退職してしまうが、やり甲斐を感じることができれば、主体的に環境に対して継続就業を出来るように働きかけていくのではないかという仮説のもと、女性の心理的側面(仕事のやり甲斐、POS)や具体的な行動(OCB、仕事に対する「積極的態度」)に着目して検討を行い、ほぼ仮説が支持される結果を得た。 今後の研究展開としては、女性を取り巻く家族・社会・経済環境が異なる県を対象に、同様の調査を実施し、新潟県では支持された仮説が支持されるかどうか、検証することも考えられる。
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