研究概要 |
1) エヴァ・キティ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』(Eva Kittay, Love's Labor (Routledge 1999)を、大学院生その他との研究会成果として、牟田和恵・岡野八代監訳により翻訳刊行した(9月、白澤社)。同書は、倫理学の分野での家族・ケアの倫理および新しい親密圏に関する議論と、政治理論の分野における社会正義論・平等論とを結びつけた重要な理論書であり、依存関係から生じる依存労働の不可避性を基礎とした平等概念の新たな地平を検討している。同書翻訳出版は、日本のフェミニズム理論・社会思想研究にとって大きな貢献となった。 2) 同書刊行を記念し、同書の意義を伝える目的で、原著者エヴァ・キティ氏を、同志社大学グローバル研究所およびお茶の水女子大学ジェンダー研究所との協働により招聘し、同志社大学(11/10)・お茶の水女子大学(11/13)にて講演会を、東京大学大学院教育学研究科にてワークショップを共催した。 3) さらに、非婚女性の生活不安をより広いケアの倫理と正義の理念のもとに考えて行くことをねらいとして、キティ氏の来日インタビュー、および岡野・牟田による解説、法学・社会学・歴史学の各分野の研究者による論考をまじえた同書の簡易版の刊行準備を進めた(2011年4月刊行予定) 4) ケアの倫理と非婚女性の生活状況の日韓比較の目的で、韓国女性政策開発院および韓国NGOグローバル・アクティビスムフェミニストスクールにて調査・研究会を行ったほか、キティの提唱するケアの倫理としての「ドゥーリア」の実践の一環として、韓国における産後調理院に関する調査を行った(2月)。
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