本年度は、前年度のインタビュー調査によってオーサーシップをめぐる問題と自然科学系のアカデミック・ハラスメントが密接に結びついていることがわかったので、1)オーサーシップとハラスメントをめぐる先行研究や議論のサーベイ、および2)日本の自然科学系研究者を対象にする量的調査の設計を行った。具体的には、(1)科学研究の成果公表におけるオーサーシップをめぐる海外の議論・先行実態調査のサーベイ、(2)実際の科学雑誌の投稿規程の情報収集、(3)日本学術会議の会員を中心に自然科学系研究者の研究業績の形式、スタイルについての資料収集と検討をおこない、それらをふまえ、(4)日本での自然科学系研究者のアカデミック・ハラスメントの実態を把握するための量的調査にむけた準備を行った。研究会での議論を続ける中で、オーサーシップのあり方やそれへの意見、それらをめぐるハラスメント経験などは、研究スタイル(多くは分野による)や研究者として育ってくる過程が影響しているのではないかという仮説に行きついた。 そこで量的調査で、・オーサーシップをめぐる不当な経験の有無、・オーサーシップをめぐる見解、研究者として育ってきた中での研究室の環境や指導教員との関係の性質、研究に関わる規範などについてひとまず医学系以外の日本の上位15大学の自然科学者に問う量的調査を行う方針を決定し、調査票の作成、対象となる大学・研究機関の選定と、分野の絞り込み、母集団の研究者リストの作成とサンプリング作業、調査票の印刷・発送作業などを行った。
|