最終年度の平成23年度は、女性医師の継続就労に影響を及ぼす因子について全国私立医科大学14校を卒業した女性医師(N=1694名;回収率83%)を対象に調査を拡大させた。就労形態(フルタイムvs/パートタイム)をアウトカムにしたロジスティックモデルにて統計学的に有意であった因子には婚姻状況にあるもの、子供を持つものでフルタイムよりもパートタイムで働いていた。従前の結果と同様に女性医師の就労には女性の社会的役割が障壁になっていた。さらに同じモデルにて男女の就労格差に対する認識が強いとパートタイムで働く割合が多く、ガラスの天井を意識することで就労意欲に何らかの影響があることが示唆された。また女性医師のキャリア構築の観点から就労形態と学会認定医資格の有無と医学博士取得の有無についても検討を行ったところ、フルタイムではパートタイムに比べて認定医あるいは専門医資格を取得している割合が多いこと、医学博士を取得している割合が多いことが認められた。このことより女性医師の継続因子には従前から指摘されてきた女性の社会的役割のほか、医療界の男女の就労格差、学会認定資格や医学博士の取得などが関連していることが明らかとなった。本研究結果は全国私立医科大学連絡協議会で発表を行い、各私立医科大学の同窓会誌やニュースレターを通じて会員へ意識啓発を行った。さらに医学教育学会や日本衛生学会、産業衛生学会、公衆衛生学会、Women's Health国際学会にて発表を行った。現在は邦文論文1編と英文論文1編が査読中である。また調査の概要ならびに結果は特設ホームページにて公開している(http://homepage3.nifty-comdzb/)。
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