研究概要 |
今年度は、ティモール島中部南岸のカラウルン川灌漑スキームに焦点をあて、技術(施設)と維持管理(組織形成/女性の参加)の両面からスキームが直面する問題点を解明するため現地調査を、2009年9月と2010年1月に実施した。あわせて同県他地域の小規模スキーム(2009年9月)も訪問した。本研究の目的は、ステークホルダーたちと協働し、灌漑開発におけるジェンダーインパクトを解明し、ジェンダー平等推進の意義とその政策を探ることであるため、ステークホルダーたち(世銀/ECのARP/RDP関係者、農漁業省灌漑局及び同局ジェンダー問題担当者、県農政事務所及び同所ジェンダー問題担当者、農業普及員、水利組合、農民・農業グループ)との関係構築に努めた。とくに、地元の女性農民との交流を重視し、プロジェクトの過程や水利組織から女性が排除されている状況とスキーム全体に関する彼女たち意見を聞き取った。 新たな知見としては、排砂システム(堆砂池、砂止め門、排砂路)の問題[県技術者と実地検分]、水利組合の運営実態(総会/役員選挙不開催、補助金使途不公表、男性世帯主主義)、施設設計をめぐるドナーと地元との意見の違い等が判明した。また、近年県内で女性の農業グループが設立が相次いだこと、しかし各女性グループの活動(米・大豆の共同耕作、養魚池)に必要な「水」を供給する灌漑施設がそれぞれの地で深刻な問題を抱えていることを知り、女性が施設の設計運用に関わる意志決定や行政との連携に関与することの必要性が認識された。 2010年1月、山積する問題への対応を女性農民をはじめ現地関係者と協議したところ、女性と男性がともに参加しカラウルンスキームが抱える問題を話し合うワークショップを実施するという構想がまとまり、県農政事務所とともに実施案を作成した。3月25日、The Workshop for Irrigation Development in Caraulun, Seeking the Way for Active and Equal Participationがベタノの農業試験場で開催され、合計120名(約3分の1は女性)が参加した。
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