今年度は、マヌファヒ県のカラウルン灌漑スキームに関する現地調査(2010年8-9月、12月末、2011年3月下旬)を続行するとともに、新たにマナトゥト県のラクロ灌漑スキームに関する現地調査(2010年9月、2011年1月初旬:PRAの実施、3月下旬)を行った。また、東ティモール農漁業省「ジェンダー政策文書」に関する灌漑局GFP(ジェンダー平等推進担当者)及び女性職員と同省GFPの会合に参加して灌漑開発におけるジェンダー課題を検討した。以上による知見と本研究による貢献を述べる。 (1) カラウルンスキーム及び周辺地域:(1)水利組合における男女共同参画の進展(3月末の男女共同参画ワークショップの成功を受け、4月の組合総会で初の女性理事が選出。その後、維持管理に関する訓練に女性会員も参加。ボボナロ県マリアナI灌漑スキームへの視察に女性農業グループメンバーが参加。一方で大型トラクターによる耕耘の提供をめぐる女性グループ指導者と県農業事務所の関係悪化や女性農業グループの分裂も発生。)(2)土砂堆積問題はさらに深刻化。乾季の大雨による被害と農漁業省によるブルドーザーと運転手の派遣の遅滞に関する問題が発生。(3)アラス郡ウェレテ:女性グループが養魚地と水田に導水する灌漑水路の修復に対する支援の獲得に成功。 (2) ラクロスキーム:(1)2011年1月にマナトゥト県農業事務所とIRCP/JICAの協力を得て、20名の女性農民とPRAを実施。参加者の水利施設や組織に関する問題関心、生産・再生産・コミュニティー活動における役割、土地所有関係等を把握。(2)2011年3月、PRA参加者の自宅や水田を訪問。乾期における家畜の放牧が米の二期作を妨げている事、その中で女性たちが土地の一部を柵で囲い、灌漑の水を利用して野菜づくりに励んでいる事を知る。(3)ラクルバル郡でラクロ川上流域の森林保全のために女性による生計向上活動が実施されている。 (3) 農漁業省「ジェンダー政策文書」の灌漑分野に関する検討会議に本調査の知見を提供。
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