カラウルン灌概スキーム及びラクロ灌慨スキームに関するこれまでの調査のフォローアップを行うとともに、新たにボボナロ県マリアナ灌慨スキームの調査を実施した。知見の一部は、東ティモール国営ラジオ局によるインタビューやマリアナのコミュニティーラジオでの調査報告を通じて現地語で公開された。また、農漁業省ジェンダー政策関係者との会合では、水という資源へのアクセスとコントロールがPGN:Practical Gender NeedsとSGN:Strategic Gender Needsをつなぐ架け橋であると認識された。 (1)カラウルンスキーム:スキームの機能不全に対し、農民及び女性グループは代替水路の掘削や水田の畑地化などで対応、一方、水利組合や農漁業省県事務所は施設復旧と施設改変に向けて動いていた。水利組合の女性理事は土砂の除去と水田の畑地利用を両睨みして調整を続けていたが、双方とも農漁業省が提供する機材の不足、故障、破損が障害となっていた。 (2)ラクロスキーム:2011年9月にPRAの参加者を再訪。水利組合の会員資格に関する女性たちの理解が不正確であったことが判明し、組織との疎遠さが浮き彫りになった。同地で多くの女性が土地を所有していることと女性の社会参画は断絶していた。2012年1月の訪問とあわせ、家畜の放牧問題により乾季の作付が監視のきく自宅付近に限定され、灌既施設からの水利用がゼロに等しいこと(※知見の訂正)、組合の財政が逼迫していることが確認された。 (3)マリアナIスキーム(2011年9月、2012年1月及び3月):同スキームでは乾季の家畜放牧問題を解決し、灌概施設の水を最大限利用している。女性は乾季のトウモロコシや野菜栽培を担っており、また用水路の水は生活用水としても利用されているため、男女ともに灌概への関心は高く、女性も水路の清掃や役員選挙に参加していた。水利組合には女性の地区リーダーも登場している。ただし女性の参加促進は政策化されていない。また、農民は維持管理費への補助をめぐって政府に異議申し立てをしており、2010年から水利費の徴収が滞っている。
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