研究概要 |
本研究は,メディアに描かれたスポーツにおけるジェンダーとセクシュアリティの内容分析,読み手の解釈の分析を通して,社会におけるジェンダー秩序を検討することを目的とする。平成23年度は,下記の研究を実施した。 第一に,メディアの質的内容分析を継続した。本年度の分析は,バレーボールマンガおよびサッカーマンガを対象にした。分析の結果,女子バレーボールマンガには,師弟関係におけるジェンダーの非対称性や,主要登場人物と周囲の人間関係における「異性愛」の描写がみられた。一方,サッカーマンガには,女性指導者に対する選手や周囲の違和感に関する描写がみられなかった一方で,彼女たちの一部については男子選手の恋愛対象となっていることを示す描写がみられた。 第二に,大学生11名および社会人2名を対象に,スポーツマンガの解釈およびメディアとスポーツ経験に関するインタビューを実施した。解釈対象のマンガ作品は,女性指導者が登場する野球マンガ2作品およびバレーボールマンガ作品より,ジェンダー秩序の攪乱がみられるエピソード計4話分を選定した。回答者には,事前に調査の趣旨を説明し承諾を得た上で,無作為に選定した1話を配付し,当日,作品の解釈および自己体験について自由に回答してもらった。回答については,事前承諾の上音声録音を行った。総録音時間は約18時間4分,ひとりあたり平均録音時間は83.4分であった。回答はすべて逐語録化した。回答より,スポーツマンガの解釈は回答者のスポーツ経験によって規定されること,マンガの解釈という営為自体が回答者自身のスポーツ経験とマンガ経験を結びつけ「身体」についての語りを引き出すものであることが示唆された。 第三に,3年間にわたる研究を総括し,メディアに描かれたスポーツにおけるジェンダー秩序の攪乱と持続マンガ作品に対する受け手の解釈の構造の重層性,の二点について考察を行った。
|