平成21年度には、(1)「風土的市民性」研究のための資料、(2)関係する自然再生・社会基盤事業についての情報を収集するとともに、(3)具体的なフィールドに出向いて、多様な関係者と意見交換を行った。 その成果として、沖縄県国頭村における亜熱帯林の保全・再生にかかわる森林管理事業および地域活性化事業に当事者として参画することが可能になった(国頭村森林ゾーニング検討委員会委員および国頭村魅力ある空間づくりアドバイザー)。この活動を通して、亜熱帯地域という固有の風土での市民参加のあり方を実地に観察し、また市民参加のあり方について指導しつつ、その課題を明らかにし、解決の方向を探求することが可能になった。また、国頭村やんばるの森と地域の森林政策等についての文献資料も蓄積しつつある。 また、関連の研究を行っている研究者との連携により、市民参加と合意形成プロセスを理解し、また理論化するための概念として「理由の来歴」(意見の理由の形成過程を示す履歴)、「環境的自律性」(複雑性を特徴とする環境の相貌とつねに対峙しつつ、そこに含まれる課題の本質を、他者との談義と協働を通して捉え、解決策を熟慮検討し、解決の活動を通して自己を高めていくこと、またその能力)および「局所的風土性」の概念の示唆を得て、これらの概念の関係を明らかにすることで、本研究の課題に答えるための道筋を見いだすことができた。 海外の研究者との交流、とくに、パリ・ラビレット建築学校、ヤン・ヌソム准教授との意見交換において「持続的風景」の概念の重要性について認識し、また、中国・大連大学人文学部歴史研究院魯霞准教授・同土木技術研究センター王桂萱教授との意見交換会により、本研究の目指す方向が東アジア地域で今後重要な課題になるということについて確認をすることができた。魯准教授、王教授は、今後、連携研究者として、継続的に意見交換する体制が整った。
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