第2年度にあたる平成22年度は、本研究の基本的な方法である(1)文献研究、(2)地域社会での文献調査・インタビュー・ヒアリングにもとづく倫理的価値概念の分析、(3)概念の分析にもとづいた現代的な意義の解明と新たな解釈の提示において、(1)と(2)の作業を組み合わせ、(3)の作業にとりかかった。 上記作業によって得られた知見をもとに、「風土的市民性」の倫理価値の基本構造の解明およびその理論構築に向けて、枠組みを明確化、厳密化するための作業を行った。 とくに、沖縄県国頭村を重点地域とし、国頭村による国頭村森林地域ゾーニング計画事業に参画しつつ、亜熱帯特有の地域性、風土性を認識しつつ、住民参加プロセスを含む合意形成プロセスの構築に従事することにより、貴重な経験を蓄積し、またその成果としての風土性についての理解を深めることができた。 また、宮崎県海岸侵食対策事業や佐渡島天王川再生事業等の関係者との交流・連携により、本研究のテーマに関して、重要な概念について手がかりを得た。とくに連携研究者である順天堂大学吉武久美子准教授、兵庫県立大学豊田光世専任講師、フランス、パリ・ラビレット建築学校ヤン・ヌソム准教授、大連大学魯霞准教授、同王桂萱教授らとの議論において、風土的市民性を構築するための基本概念として、「理由の来歴」「風土的自律性」等の概念について分析を深めることができた。また、こうした成果を多様な媒体で発表した。
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