研究課題/領域番号 |
21520008
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
田中 伸司 静岡大学, 人文学部, 教授 (50207099)
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キーワード | 倫理学 / 哲学 / 西洋古典 / プラトン / ソクラテス / 対話 |
研究概要 |
本年度の研究計画時には『パイドン』篇の分析を中心に「対話という共時的な営みと、イデア・想起説という超越との関わりについての分析」を行う予定であった。しかし、『ポリテイア』篇第1巻に関しての研究成果をまとめた結果("Justice and Reward : On the Art of Wage-earning in Book 1 of the Republic", Japan Studies in Classical Antiquity vol.1 2011 pp.87-97)、ソクラテス的探究における対話と真理との関係を主題とするためには、魂の分析を行っている『ポリテイア』篇を研究の軸に据えることが不可欠であるとの判断に至った。本年度の研究の具体的内容としては、上述の第1巻における「正義と報酬」に関する研究成果を基礎に、第4巻における正義の規定(443e-444a)を、魂のうちの葛藤(理知的、気概的、欲望的という三要素の間の緊張と対立)というコンテクストから読み解く作業を進めた。並行して、第9巻の「外なる人と内なる人」の比喩および第10巻の「立派な人(エピエイケース)」との比較考量作業を行い、その結果「フィロス・フィリア」が重要な概念として浮び上がった。現在、フィリアに関する基本文献であるG.Vlastosの論文("The Individual as an Object of Love in Plato" 1981)および魂の三部分節に関する基本文献であるG.R.F.Ferrariの論文("The Three-Part of Soul" 2007)、双方への有効な反論を構築できる見通しが立ちつつある。本年度の研究成果については、24年8月に予定しているオックスフォード大学での『ポリテイア』篇を中心とした検討会を経たのち邦語および欧文での発表を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時には補助的な検討課題と考えていたプラトン『国家』篇の分析が本研究の中心的な課題の一つに浮上し、そのため一部対話篇の分析を取りやめることとなったものの、ソクラテスの対話の構造と真理との関係を明らかにするという本研究の目的にとっては大きな進展があり、研究計画全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
計画の最終年度である24年度においては、ソクラテスの真理のとらえ方の検証を『国家』篇を中心に行う。本研究の応募時においてはイタリア圏において本研究についての資料収集を行う計画であったが、現在、8月上旬に連合王国のオックスフォード大学Corpus Christi CollegeおよびClassics Centreにおいて資料の収集とStephenHarrison教授をはじめとする古典関係のスタッフと討論を行うことを予定している。
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