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2009 年度 実績報告書

エンハンスメント問題の倫理的・法的検討 日米独スイスの比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 21520009
研究機関静岡大学

研究代表者

松田 純  静岡大学, 人文学部, 教授 (30125679)

研究分担者 神馬 幸一  静岡大学, 人文学部, 准教授 (60515419)
堂囿 俊彦  静岡大学, 人文学部, 准教授 (90396705)
キーワードエンハンスメント / 医学の目的 / 再生医療 / 自己処分権 / 生命倫理 / 司法精神医学 / 先端医療 / 脳神経倫理
研究概要

エンハンスメントの現状と問題点を認識するために、福祉ロボット展示会で開発状況を調査し、山梨大学医学などを訪問調査し、エンハンスメント論研究会と共催で研究会を開催し、研究交流を行った。本テーマについて,1)倫理的には,自己の心身への,治療目的ではない介入が,自己決定権によってどこまで正当化できるか,2)法的には,患者の同意に関して自己の身体に関する自己処分権はどこまで認められるのかを中心に研究を進めた。1)では,比較的強靭な論拠として,無危害原則と,エンハンスメントを求めるクライアントの便益とリスクを比較衡量する論があるが,リベラルな社会の愚行権をふまえると,これらは決定的な根拠にはなりえない。2)では,人体改造の場面において「身体の完全性」に関する法益保護の範囲をめぐる問題,「医学的適応性」と「依頼者の自己決定」をどう調整できるかという問題,それを判断する際,公序良俗論がどこまで有効かということが論点として認識できた。この分野での法的検討は日本ではほとんど見られないが,ドイツ語圏で重要な研究成果が発表されていることを知り,この成果もふまえ,日本における過去の関連判例なども検討してきた。
こうした論点をさらに深めて行く際,治療/エンハンスメントの線引きのみに囚われていても展望は開けない。エンハンスメントを「願望実現型医療」というより広い医療文化論的文脈のなかで捉えなおす必要を認識した。これまでのエンハンスメント論をこの文脈へと開くことによって,哲学的・人間学的・文明論的に深めていける展望が見えてきた。その際,自らの人生を構想し作っていく上での人格全体の調和ある発展を見据える整合性論の有効性が見えてきた。願望実現型医療や整合性論などの視点はわが国ではまだどこでも提起されておらず,新しい知見と言える。これらの成果を論文(印刷中を含む)に発表し,また学会や講演等で発表し,ホームページからも情報発信した。こうした情報発信によって,わが国におけるエンハンスメントをめぐる議論に新しい方向性を与える可能性が出てきた。

  • 研究成果

    (28件)

すべて 2010 2009

すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (15件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] ドイツ事前指示法の成立とその審議過程―患者の自己決定と、他者による代行解釈とのはざまで2010

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 雑誌名

      医療・生命と倫理・社会 Vol. 9 No. 1/2

      ページ: 34-43

  • [雑誌論文] いま求められている薬剤師倫理教育とは?―「薬学教育モデル・コアカリキュラム」はその羅針盤となりうるか?2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 雑誌名

      薬学雑誌 (日本薬学会) vol. 129 No. 7

      ページ: 807-813

    • 査読あり
  • [雑誌論文] サイボーグ化の先にあるもの―境界と人間像をめぐる問い2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 雑誌名

      文化と哲学 (静岡大学哲学会) 26

      ページ: 73-86

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 薬剤師のモラルディレンマ 第14回 薬剤師の研究発表2009

    • 著者名/発表者名
      川村和美, 松田純
    • 雑誌名

      薬局, 南山堂 Vol60, No. 4

      ページ: 172-176

  • [雑誌論文] 薬剤師のモラルディレンマ 第15回 実験で動物を殺めるとき2009

    • 著者名/発表者名
      川村和美, 松田純
    • 雑誌名

      薬局, 南山堂 Vol60, No. 5

      ページ: 128-134

  • [雑誌論文] 薬剤師の倫理について (対談)2009

    • 著者名/発表者名
      松田純, 平井みどり
    • 雑誌名

      Pallette 74

      ページ: 3-6

  • [雑誌論文] 臓器移植におけるスタンダードの設定 : ドイツ連邦医師会の役割と正統性2009

    • 著者名/発表者名
      ヘニング・ローゼナウ(神馬幸一訳)
    • 雑誌名

      静岡大学法政研究 14巻1号

      ページ: 32-2

  • [雑誌論文] Privatisierung der sozialen Kontrolle (社会統制の民営化)2009

    • 著者名/発表者名
      神馬幸一
    • 雑誌名

      静岡大学法政研究 14巻2号

      ページ: 120-89

  • [雑誌論文] ハラスメントに関するドイツの議論状況2009

    • 著者名/発表者名
      神馬幸一
    • 雑誌名

      犯罪学雑誌 75巻6号

      ページ: 169-172

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 自己決定の対象としての身体―カントにおける「人間の尊厳」の射程2009

    • 著者名/発表者名
      堂囿俊彦
    • 雑誌名

      文化と哲学 26

      ページ: 43-64

    • 査読あり
  • [雑誌論文] がん患者ケアで求められる倫理2009

    • 著者名/発表者名
      堂囿俊彦
    • 雑誌名

      調剤と情報 9月臨時増刊号 がん患者ケアガイドブック 15

      ページ: 9-15

  • [学会発表] 臨床にのぞむ薬剤師の倫理2010

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      第3回病院長期実務実習受入担当者連絡会議・研修会
    • 発表場所
      京都薬科大学
    • 年月日
      2010-03-14
  • [学会発表] 実務実習に求められる医療人倫理教育2010

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      日本病院薬剤師会近畿学術大会シンポジウム「新たな医療の担い手養成へ~長期実務実習を目前に控えて~」
    • 発表場所
      国立京都国際会館メインホール
    • 年月日
      2010-01-30
  • [学会発表] エンハンスメント問題と治療の概念再考2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      エンハンスメント研究会
    • 発表場所
      静岡大学人文学部
    • 年月日
      2009-12-11
  • [学会発表] 人体改造 (身体的エンハンスメント) に関するドイツの議論状況2009

    • 著者名/発表者名
      神馬幸一
    • 学会等名
      エンハンスメント研究会
    • 発表場所
      静岡大学人文学部
    • 年月日
      2009-12-11
  • [学会発表] 医療薬学の目的とエンハンスメント2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      東北哲学会第59回大会
    • 発表場所
      新潟大学脳研究所
    • 年月日
      2009-10-25
  • [学会発表] エンハンスメント問題と治療の概念2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      「医療の本質」論集研究会
    • 発表場所
      熊本大学
    • 年月日
      2009-10-04
  • [学会発表] レギュラトリーサイエンスとしての生命・医療倫理2009

    • 著者名/発表者名
      堂囿俊彦
    • 学会等名
      第14回静岡健康・長寿学術フォーラム
    • 発表場所
      グランシップ
    • 年月日
      2009-10-02
  • [学会発表] ファーマコゲノミクスの時代を迎えて―遺伝情報の倫理2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      第19回 SMO研究会
    • 発表場所
      東医健保会館 大ホール
    • 年月日
      2009-07-25
  • [学会発表] 多文化共生社会のヒューマン・ケア2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      静岡大学公開講座
    • 発表場所
      静岡市産学交流センター
    • 年月日
      2009-06-23
  • [学会発表] サイボーグ技術は人間社会をどう変えるか2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      静大フェスタ公開授業
    • 発表場所
      静岡ツインメッセ
    • 年月日
      2009-05-31
  • [学会発表] 専門職の倫理と法2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      社会理論研究会
    • 発表場所
      東洋大学社会学研究所
    • 年月日
      2009-05-23
  • [学会発表] 地球の未来への責任―対人関係の倫理を超えて2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      静岡県環境保全協会第38回定時総会記念講演会
    • 発表場所
      もくせい会館
    • 年月日
      2009-05-20
  • [学会発表] ニューロエンハンスメントと"所帯じみたサイボーグ"2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      第2回エンハンスメント論研究会
    • 発表場所
      鹿蔵ゲストハウス
    • 年月日
      2009-05-05
  • [学会発表] ドイツ事前指示書法案審議をめぐって2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      中部生命倫理学研究会
    • 発表場所
      名古屋大学文学部
    • 年月日
      2009-04-25
  • [学会発表] 現代医療の倫理―QOL・緩和再考2009

    • 著者名/発表者名
      松田純
    • 学会等名
      藤枝市立総合病院 医療倫理講演会
    • 発表場所
      藤枝市立総合病院
    • 年月日
      2009-04-22
  • [図書] 薬剤師のモラルディレンマ(松田純・川村和美・渡辺義嗣 (編))2010

    • 著者名/発表者名
      松田純・堂囿俊彦・神馬幸一, 他
    • 総ページ数
      232
    • 出版者
      南山堂
  • [図書] 『レクチャー生命倫理と法』 第15章「ヒト胚・クローン技術・ES細胞・iPS細胞の利用」(174-184頁) を担当(甲斐克則編)2010

    • 著者名/発表者名
      神馬幸一, 甲斐克則, 他
    • 総ページ数
      266
    • 出版者
      法律文化社

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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