研究概要 |
代表者宮原は、現象学の立場からラネカーの認知言語学の根本的な理論をさらに検討した。今年度は、ラネカーの認知言語学が前提としている存在論を解明するとともに、われわれの心にどのような意味ネットワークがあるかを解明した。それはMental lexicon and encyclopedic knowledge (Between East and West : Transcultural Flows of Encyclopedic Knowledge Heidelberg University)として発表した。この発表においては、まずGeorge Lakoffが、Women, Fire, and Gangerous Thingsで議論している放射状カテゴリーの提案の詳細な分析により、数助詞は十分な意味での分類語ではないことを主張し、その数助詞を利用しての立論の弱点を指摘し、Lakoffを批判した。そして、古典的カテゴリーモデルと放射状カテゴリーが矛盾しないことを提示し、さらには脳のニューロン・ネットワークの構造に類似したライゾーム構造モデルを提案した。これは百科事典的知識構造の検討から導き出されたものであり、われわれが百科事典を参照するときの相互参照cross referenceという現象やインターネットの検索項目の参照の仕方を参考に構築した。さらに、ラネカーの"subjectivity"と"subjectification"なる概念に関して現象学の立場から考察し、第37回ことば工学研究会で発表した。そこではラネカーの理論を現象学の立場から検討し、the egocentric viewing arrangementsと現象学の見方(the phenomenological view point)との違いを明らかにした。そして、フッサールの現象学の認識論とE.マッハの感覚主義的認識論の違いを明らかにした。 分担者宮浦は、マルチストーリー・モデルなる概念を使用して、さらに新たなディスコース分析の手法を提案するとともに、品詞分類に関する従来の説を覆すべく認知言語学的考察を行った。
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