研究課題/領域番号 |
21520011
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
冨田 恭彦 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30155569)
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キーワード | 観念 / 観念説 / ロック / バークリ / ヒューム / モリニュー問題 / 自然主義 / 心 |
研究概要 |
本研究は、西洋近代認識論の基盤となった観念説と自然学との関係を再考することにより、近代認識論が自然主義的観念説の枠内で本来機能していたことを確認するとともに、それがどのような仕方で変質・解体して行ったかを解明しようとするものである。 その研究の要の一つとして、平成23年度では、まず、「物」(経験的対象)の「外在性」の認知に関するバークリの見解を検討した。ここでとりわけ重要になるのは、『新たな視覚理論のための試論』における彼の議論である。この議論は、知覚に関するロックの見解をさらに発展させたものとして捉えられるが、その議論においてバークリが行う外在的認知の説明が、外界を心の中にある観念からなるものとする彼の見解とどのようにかみ合っているかを、いわゆる「モリニュー問題」の諸議論をも念頭に置きながら、明らかにした。この試みは、観念を「心の中」なるものとするロックとバークリにおいて、その「心の中」という言葉が真に何を意味しているかを明確にしようとするものであり、これによって、故John W. Yolton教授との間で続けられてきた「心の中」の意味をめぐる議論に、一定の結論を得ることができた。また、そうした作業と並行して、近年強調されているヒュームの中のカント的な面を再考し、ヒュームの観念説が持つ〈自然主義的論理の解体〉と〈カント的表象説の先取り〉の二面の関係を再確認することにより、続けて試みられるカント研究への準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究が平成23年度に進めようとしていたバークリとヒュームの読み直しとともに、その基盤となる自然主義的論理そのものの検討を、自然主義を肯定するクワインのそれに戻って進めることができた。その点で、平成23年度の研究は、当初の計画以上に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進んでおり、当初の計画通り進めるのみである。
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