1.高齢者がどのような「場」を求め、それがいかなる条件下で成り立つのかを明らかにするために、図書館、研究所、博物館などで「場」や「QOL」の関連資料を収集した。中国語文献に関しては、中国人研究者の協力を得て、邦訳作業を進めた。また5月下旬と3月上旬に、重慶市、成都市、南京市の色々な老人施設を視察した。 2.日中間の「場」がいかに異なるかを明らかにするためにフィールド調査を行った。街の広場や公園で過ごす老人たちを観察し、写真や動画に収めた。ただし、調査が都市に限定されたために、「場」に関する村落/都市の地域差を解明することができなかった。この調査で、日本ではスポーツや文化サークルの「場」が多いのに対して、中国では遊びや娯楽の「場」が多いことが分かり、日中両国の文化的相違が一段と明瞭になった。 3.中国人の老後生活のQOLについて調査をした。11月上旬に北京市の中国老齢科学研究センターを訪問して副所長と主任に会い、中国社会のQOLについての情報を得た。また同センター発行の調査データを入手した。2月上旬に2名の中国人研究者を日本に招いて、その分析方法について助言を受けた。 4.日本人の自殺数増加という深刻な事態を受けて、高齢者のQOLと自殺がどのように関係するのかを明らかにし、その結果を論文にまとめて公表した。なお、その研究途上でQOL概念を見直す必要に迫られたが、その点は次年度の研究課題として残した。
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