研究課題/領域番号 |
21520019
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
圓谷 裕二 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60227460)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | パースペクティヴ主義 / 超越論的哲学 / 真理論 / 知覚論 / 存在論 |
研究概要 |
研究の目的は、認識一般に関して、その究極的基礎づけを目指す超越論的哲学と究極的基礎づけを不可能と見なすパースペクティヴ主義に関して、両者の立場を比較検討しながら、近現代哲学の根底にある根本思想を照らし出すことである。 本年度は、近現代哲学におけるパースペクティヴ主義の代表的哲学者であるメルロ=ポンティについて主として研究した。彼の知覚論、真理論、言語論、存在論などに焦点を絞りながら研究することにおいて、彼のパースペクティヴ主義を浮き彫りにした。例えば、知覚論においては、身体論に基づきながら内在と超越の両義性を浮き彫りにし、また真理論においては、デカルトやカントやフッサールの超越論的哲学を批判するメルロ=ポンティの真理論を論じることによって、彼の真理概念が不条理を土台にするそれであることを明らかにした。 また、ハイデガー哲学からの影響作用史を考察することによって、同様な立場に立ちながらもハイデガーとの差異について見定めることによって、メルロ=ポンティのパースペクティヴ主義をよりいっそう際だたせることができた。 以上の研究を踏まえながら、超越論的哲学とパースペクティヴ主義との間の差異と同一性、相互の関係について一定の研究成果が得られた。今後に残された問題は、認識論や存在論のみならず、価値論や実践哲学においてメルロ=ポンティの哲学が、パースペクティヴ主義の立場から、いかにして伝統的な超越論的哲学の克服をはかろうとしたのかについての研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パースペクティヴ主義の立場から、超越論的哲学の基礎づけ主義の問題点を指摘するとともに、ハイデガー哲学との比較検討にまで立ち入ることができたことが研究の成果である。 しかしながら、メルロ=ポンティとニーチェのそれぞれのパースペクティヴ主義の比較検討が十分ではなかったので、今後この点について留意しながらさらに研究を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、メルロ=ポンティ哲学のパースペクティヴ主義の研究を中心に据えながら、最終年度であることをも考慮に入れて、近現代哲学における彼の哲学の歴史的および体系的意義についてより詳しく研究する。 そしてその研究は、歴史哲学の研究へと波及し、ニーチェ、ハイデガー、アーレント、フーコーなどの歴史哲学との比較によって、パースペクティヴ主義がもつ哲学的意義について論究する。
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