研究課題
平成25年度には筆者は、全六部――(1)感性論(空間および時間)、(2)論理(「多なき一」もしくは「一における一」)、(3)実在と表象(自然と文化)、(4)自由と非自由(行為と無為)、(5)身体論(身体の発生論的構成)、(6)他者論(自然における他者と文化的他者)――から成る「自然の現象学」という筆者の哲学研究の全体構想の中から、その第五部「身体論」に関わる以下の二つの研究を行った。第一に、平成24年度末に京都大学で催された或る国際学会において筆者が仏語で行った講演を、今年度中に拡大・発展させ、和文で「身体のアルケオロジー――『肉』の誕生以前から文化的身体の生成まで」という論文へと原稿化した。これはミシェル・アンリの『身体の哲学と現象学』や『受肉』に見られる身体論・肉論を集中的に検討しようとするものだが、そのさい筆者は、マルブランシュ、ヒューム、コンディヤック、ビラン、ラニョ、フッサール、ベルクソン、メルロ=ポンティなど、アンリのテクストで言及された伝統哲学者たちの身体論をも、併せて批判的に考察した。本稿はまさに「身体の発生論的構成」を正面から主題化したものである。第二に、筆者は「身体論」への序論的考察として、近世心身問題の出発点たるデカルトの身体論について研究して「デカルトと心身合一の問題」として脱稿し、その成果の一部は同じ題名のもとに『愛知県立芸術大学紀要』に掲載した。本稿は、グレスやマリオンらの最新のデカルト研究をも検討したという点で、たんなる「序論的考察」にとどまらず、デカルトのコギトそれ自身のうちに「主観的身体」の考えを導入することで、筆者自身の身体論にも大きく裨益する結果となった。以上二つのテクストは、近く公刊するつもりの『身体の生成――《自然の現象学》第四編』という著作の中に収録する予定であり、その意義は、世界的に見ても十分に認められうるものと確信する。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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愛知県立芸術大学紀要
巻: 43 ページ: 77-90
フランス哲学・思想研究
巻: 18 ページ: 41-60