・今年度の最大の成果としては、私が編著者となって、合計9人の執筆者を擁し、3年越しで企画・編集してきた単行本『進化論はなぜ哲学の問題となるのか-生物学の哲学の現在』が、ようやく7月に勁草書房から出版の運びとなったことである。この本はある程度の評判を呼び、8月29日の朝日新聞の書評欄で作家の高村薫氏にも取り上げていただき、また同氏には同新聞2010年末の「今年の3冊」の中の1冊にも挙げていただいた。 ・さらに、9月には私が中心となって企画した「第4回生物学基礎論研究会」を、八王子セミナーハウスにおいて成功裡に開催することができた。今回は参加発表者を広く公募することにし、日本進化学会や科学基礎論学会、日本科学史学会などのメーリングリストを通じて希望者を募ったところ、11人の発表希望者を含む合計19名の参加者が集まった。また日本進化学会会長である斎藤成也氏にも、ゲストスピーカーとしてお越しいただけた。合宿形式で行われた二日間の研究会は盛況の内に閉会し、来年は慶応大学で開催することが早々と決定された。ちなみに私は、「Massive Modularity Hypothesisについて」と題する、進化心理学のモジュール集合体仮説を批判的に検討する報告を行った。当研究会は、主として文系出身の科学哲学者が中心メンバーになってこれまで年一回開催してきたものであるが、今回の企画の成功を通して、特に進化学会に集う理系の研究者の間にも、生物学をめぐる哲学的・方法論的・概念的問題に深い関心を持った方々が多数おられるということを発見でき、彼らとのネットワークを築くことができたことが、最大の収穫であった。(この研究会の詳しい情報は、この報告書の項目13に掲げた当研究会のHPで見ることができる。)
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