今年度は、昨年度に引き続き、公共圏における尊敬の機能について哲学史的な検討を試みた。 具体的には、公共圏において出会われる他者、さらに、公共圏とその外部との関係に着目して、主に「教養」概念と市民的公共性の概念の起源との関係を明らかにした。その際、公共圏における自尊心や尊敬というものが、必ずしも根源的なものではなく、むしろ、決疑論的な問題解決能力としての教養から派生したものである点を明らかにした。 このような作業により、「尊敬」概念の成立史の1つの局面に、昨年度までとは異なる視点から光を当てることができたと考えている。 なお、この研究の暫定的な成果の一部は、昨年度公刊された『これが「教養」だ』(新潮新書)において明らかにされている。
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