研究概要 |
本研究では、生命倫理学における「安楽死・尊厳死」論とキリスト教との関連性について、とくに、生命倫理学黎明期に活躍したキリスト教神学者ジョセフ・フレッチャー(Fletcher, Joseph, 1905-1991)の叙述に着目することにより、生命倫理学成立史におけるフレッチャーとそのキリスト教的背景の位置取りを検討してきた。 最終年度にあたる平成24年度は、フレッチャーの広範な著作の蒐集・整理について、一定程度の完成をみることが出来た。また、フレッチャーの「安楽死・尊厳死」論と、フレッチャーが客員教員をつとめた1970年代初頭の日本滞在時に国際基督教大学にて近しい関係にあった古屋安雄が、当時の著名な神学者ヴァン・ドゥーセン夫妻の1975年の「理性的」自殺ついて報ずるなど、日本において「安楽死ブーム」ともいうべき状況が展開した1970-1980年代の「安楽死・尊厳死」の言説を、映画、演劇、文学、メディア報道など広範に照合することにより、生命倫理学における「安楽死・尊厳死」論とキリスト教について、pro life vs. pro choice, SOL vs. QOLといった、人口に膾炙したステレオタイプな理解とは異なる関連性を指摘した。 上記の研究の具体的な成果として、研究論文のほか、発達心理学や社会科教育など、広範な領域の図書において小論を公刊し、教育関係者やキリスト教系のセミナーで教育講演を行った。
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