研究課題/領域番号 |
21520039
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
永嶋 哲也 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (60304698)
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キーワード | 哲学 / 思想史 / 西洋古典 / 西洋史 / 外国文学 |
研究概要 |
1.アミキティア(amicitia)に関する中世文学者の古代哲学受容度の検討を行うために、アベラールとエロイーズの往復書簡の中で特にエロイーズ書簡を検討し、amorとamicitiaという語の使用、また古典文学的修辞の使用状況(古典ラテン韻文の受容状況)また同時代のラテン語韻文やロマンス語韻文との韻律型の共通性などを分析した。(「エロイーズ書簡におけるamorとamicitia」京大中世哲学研究会 第220回研究会、平成23年11月26日) 2.しかし、そのような検討をロマンス語文学作品にまで押し広げてひろくアミキティア論の影響関係を明らかにすること、さらにはロマンス語文学作品中での恋愛観についての描写の仕方や思想的背景を検討するところまでは研究を進めることができなかった。つまり、中世の文学者など知的階級においてどれほど古代哲学の著作が読まれていたのかを検討し、さらにいわゆる宮廷風恋愛の描かれ方についてアミキティア論との関連から考察する予定であったが、成果としてまとめるまでには至らなかった。 3.キリスト教教義における愛の理想(caritas)がいわゆる「人間の尊厳」という考え方に与えた影響について、かつて本研究に先立つ研究で指摘していた(「愛の発明と個の誕生-思想史的な観点から-」『比較思想史論輯』第6号、2004年3月)のであるが、今回改めて「尊厳」という語に担わされた意味の側からカリタス、そして愛一般との関連についての研究をまとめることができた。(「尊厳の変容-卓越、価値そして自尊へ」『人間と医療』1号、2011年)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
古代哲学から中世文学への影響関係が、当初の見込みよりも複雑であり、調査・検討しなけちばならない内容が多岐にわたるということが研究を進める中で明らかになってきた。また思想史的研究領域の中でも、amictiaのキリスト教神学の中での位置付け、また愛と罪の関係など明らかにすべき問題点が研究を進める中で明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
上記11の遅れについても、充分に明らかにできてない点をおざなりにして次の段階へと進むわけにはいかないので、多少の計画変更が余儀なくされる。もちろん明らかにしなければならない点すべてを同時に明らかにするのは現実的ではないので、研究を進める上での優先順位をその重要度と緊急性によって定め、その優先順位に従い研究を進めて行きたい。
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