研究課題/領域番号 |
21520039
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
永嶋 哲也 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (60304698)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 哲学 / 思想史 / 西洋古典 / 西洋史 / 外国文学 |
研究概要 |
中世末期の俗語韻文(ダンテの『神曲』)とラテン語散文(ペトラルカの『わが秘密』)を題材に、恋愛信仰(神格化される恋愛とその愛神への帰依)とキリスト教信仰(他の神への崇拝を禁じる一神教たるキリスト教への信仰)とがどのように両立し、また対立していたのかということについての考察を行った。結果、ダンテにおいては奇妙な仕方で両者(愛神への崇敬とキリスト教の信仰)が共存していたのに対して、ペトラルカにおいては共存が崩れていることを見て取り、以上の論点を論文にまとめた(「恋愛抒情詩の伝統における愛の神聖性とキリスト教教義 ── ダンテとペトラルカに見る恋愛への共感と拒絶 ──」『福岡歯科大学学会雑誌』39巻1号掲載予定)。 上記論文では代表的な二つの作品を例にとり論じたが、通時的により広く作品をとりあげ検討を広げる必要があるだろう。また、後の時代においてどのように変化し、現代のわれわれに接続しているのかも将来的には追跡したい。 当初、当該年度においては、古代哲学のアミキティア(amicitia)論がどのように中世の神学者やロマンス語文学の作者たちに受容されたか検討し、そしてそのような研究にくわえ、キリスト教教義におけるカリタス(caritas)論がどのように展開し、神学者以外にどのように浸透していったか考察する予定であったが、成果としてまとめるまでには到らなかった。しかし、アミキティア論が中世においてキリスト教神学者、聖職者、そして一般信徒の中でどのようにとらえられていたか明らかにするために、彼ら彼女らが共通して有していたものとして文書作成の技術(ars dictaminis)を検討するのが有効な方途ではないかという考えに至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一つには当該年度の次の年度に着手予定であった事柄、「後世の恋愛観に対する影響と変遷に関する調査」を当該年度に行い、当初当該年度に行う予定であった内容を逆に次年度に回したからというのがある。 第2には、古代哲学から中世文学への影響関係が、当初の見込みよりも複雑であり、調査・検討しなければならない内容が多岐にわたるということが研究を進める中で明らかになってきたことと、また思想史的研究領域の中でも、アミキティア(amictia)のキリスト教神学の中での位置付け、また愛と罪の関係など明らかにすべき問題点が研究を進める中で明らかになってきたこととがある。 最後に、文書作成の技術(ars dictaminis)の伝統の中でローマ古典期の韻文が中世においてどのように利用されていたのか明らかにする必要があると研究を進める中で明らかになってきたが、当初、そのような研究は予定にいれていなかったからというのがある。
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今後の研究の推進方策 |
上記11の遅れについても、充分に明らかにできてない点をおざなりにして次の段階へと進むわけにはいかないので、多少の計画変更が余儀なくされる。もちろん明らかにしなければならない点すべてを同時に明らかにするのは現実的ではないので、研究を進める上での優先順位をその重要度と緊急性によって定め、その優先順位に従い研究を進めて行きたい。
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