本研究は、絶対者と場所という問題群を像と場のパースペクティブから再検討し、像と場の哲学の独自な展開を明らかにすることを目的とする。家稷 こうした観点から、研究代表者は、平成22年度の研究計画として次のようなポイントを挙げた。すなわち、(1)江渡狄嶺と日本思想との連関、(2)フィヒテとドイツ観念論との関連の究明にとりくむことである。前者に関しては、とくに江渡狄嶺の家稷と安藤昌益の直耕・互性に着目し、安藤昌益をはじめとした日本思想に造詣が深く、江渡狄嶺についても高い関心をもっているシカゴ大学のNajita教授にも直に会ってインタヴューを試みることを課題とした。同教授は、アメリカから見た東洋の歴史および思想を研究されている点で、東西の対話を促進しようとする研究代表者の関心を多面的に刺激するものと期待できたからである。結果的には、Najita教授の体調の問題があってインタヴューは実現できなかったが、その準備の過程で、家稷と直耕・互性の本質的な関わりを究明することができた。後者に関しては、編著『フィヒテ--「全知識学の基礎」と政治的なもの--』(創風社、2010年8月)の刊行を通して吟味した。そのなかで取り扱われたフィヒテの第一根本命題をめぐるシェリングとヘーゲルとの関わりは、本研究をすすめる上で重要な焦点のひとつとなるものと位置づけることができた。 以上の研究は、最終年度である次年度に十分生かせるものと考える。
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