本研究は、像と場のパースペクティブから、絶対者と場所という問題群を再検討することを目的とする。この観点から、平成23年度は、(1)フィヒテの論理と絶対者の関係を包括的に研究されているPaimann博士とのインタヴューを行うことを課題とした。ただ、万が一このインタヴューが実現できなかった場合のことを考えて、(2)フィヒテの『超越論的論理学』の研究を独自にすすめることをも想定しながら研究を開始した。 結果的には、(1)については、インタヴューの申し込みにたいするPaimann博士からの断りの連絡が入ったので、実現できなかった。 けれども、(2)については、おおいに成果があった。フィヒテは、三段論法を知の根源的形式として重視する観点から、小前提を事実知としてとらえる独自の視点を提示し、小前提の重要な意義を明解する。すなわち、根源的で事実的な知のうちにあるものを、三段論法の形式において再生産することである。たしかに、事実的知は、法則によって限定される。けれども、どうじに、法則はただ事実においてのみ可視的となる。換言すれば、限定された事実的知のもとで無限な法則がみいだされることをもまた意味する。それゆえ、小前提は、そこにおいて大前提と小前提が出会い、両者が合致する、そうした場なのである。これが、「超越論的論理学」における根本的な洞見にほかならない。以上の確認は、本研究全体にとって大きな意義をもつものとなった。
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