本研究は、日本におけるミシェル・アンリ研究者の横のつながりを形成するための組織作りを行うとともに、将来、日本のアンリ研究を国際的な連携のもとで展開していくための礎石作りを行い、それと連動させる形で、ミシェル・アンリ哲学の現代思想における意義付けを明確化することを目指すものである。 本年度の研究実績としては、まず、5月に、間文化現象学プロジェクト(基盤研究(B)研究代表者:谷徹(立命館大学))の間文化現象学ワークショップにおいて、ミヒャエル・シュタウディグル氏とともにパネラーをつとめ、研究発表を行った。また、6月には、本研究の一環として2009年8月に設立し、2010年3月に第一回研究大会を開催した「日本ミシェル・アンリ哲学会」の第二回研究大会を東京大学にて開催した。 アンリ哲学研究の国際交流に関しては、11月にプラハ(チェコ)で開催されたアンリ関係のコロックで研究発表を行うとともに、ウィーン(オーストリア)、ルーヴァン・ラ・ヌーヴ(ベルギー)、メッス(フランス)、パリ(フランス)を訪れ、カレル・ノボトニー、ロルフ・キューン、ミヒャエル・シュタウディグル、ジャン・ルクレール、グレゴリー・ジャン、フレデリック・サイラー、ディディエ・フランクなどの研究者と研究打ち合わせ等を行うことができた。このように、アンリ研究関係でヨーロッパの多くの研究者と交渉を持てたことは、今後の日本におけるアンリ研究の活性化にとって非常に意義深いことであった。 さらに、12月には、ここ数年来の研究成果を著書としてまとめた『経験のアルケオロジー-現象学と生命の哲学』を勁草書房より上梓した。この著書では、主にフッサール、メルロ=ポンティ、ベルクソン、ミシェル・アンリの哲学を論じ、これらの哲学者が「経験の起源の探究」というテーマを巡っていかに思索し、そうした思索のプロセスがミシェル・アンリ哲学へとどのように流れ着いたかを跡づけた。
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