1、論文「技術者倫理における内部告発の問題」では、まず内部告発の特徴と内部告発する際のジレンマについて論じています。次に、技術者倫理の文献においてしばしば取り上げられているディジョージの内部告発の正当化理論が再検討され、その問題点が明らかにされています。最後に、内部告発を実行する際に注意すべき点について論じています。 2、『技術者倫理の現在』の第一章では、技術者倫理に従うべき根拠について取り上げ、「社会を維持・発展させて、その社会の中で技術者として生きていくためには技術者倫理に従うべきである」という結論を引き出しました。第二章では、価値概念の分析を通して、道徳的ジレンマの理解という点に関して技術者倫理を改善するための三つの提案がなされています。第三章では、功利主義や義務論を、(1)同時に成立する理論として並列的に論じ、(2)倫理問題を解決するために利用する、という従来の技術者倫理の特徴が明らかにされています。そして、(1)の特徴は支持できないこと、(2)の特徴はプラグマティックな方法論とつながりがあることが示されています。第四章では、「持続可能な発展」の概念の重要性が強調され、自然の「本質的価値」についての考察を通して、環境問題を論じる際にしばしば依拠される人間中心主義vs.非人間中心主義の枠組みを乗り越える必要性が主張されています。第五章では、「グローバルな視点」についての考察を通して、技術者には、人口問題・南北問題と関わっていく責任があるということが指摘されています。第六章では、まず「内部告発の特徴」、「内部告発する際のジレンマ」について述べられます。次に、ディジョージの内部告発の正当化理論が再検討され、最後に「内部告発者の保護」について述べられています。
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