研究課題
研究期間内に以下の三つのプロジェクトを完成させた。1.『大乗荘厳経論』第三章、第六章、第十九章の偈頌(サンスクリット語、チベット語訳、漢訳)、世親釈(サンスクリット語、チベット語訳、漢訳)、無性釈(チベット語訳)、安慧釈(チベット語訳)の対照テキスト。中国法相教学の伝える内容がインド以来の瑜伽行唯識思想の内容であると考えられてきたが、特に『大乗荘厳経論』の偈頌および諸注釈書を歴史的推移と照らし合わせて考察すると、むしろ中国で作り上げられた教義である気配があった。弥勒・無著・世親の時代にはそもそも四智と人識の結びつきも、五姓各別の考え方もなかったのではないかとわかり始めていた。さらには伝承に基づく諸論師の系譜にも信憑性の薄いことが判り始めていた。そこで前回の科研課題で完成させた『大乗荘厳経論』第九章、第十一章、第十八章の対照テキストに加えて今回の対照テキストを完成させることにより、他のプロジェクトで研究されている、第一章、第十三章、第十四章を加えて、難解な『大乗荘厳経論』の読解をし易くする準備が整えられた。2.研究チームで五姓各別のインド、中国、韓国、日本の総合研究。五姓各別について『大乗荘厳経論』第三章や『仏地経論』のほかにこのテーマを扱うテキストを研究チームで共同研究することにより、五姓各別のインド、中国、韓国、日本の総合研究が完成したと考えている。3.研究チームで玄奘訳『仏地経論』全体の日本語訳(日本初)の吟味。月に一度程度定期的に研究会を行い、書き下し文を用意して、それを漢文としての理解と対応するチベット語訳と合わせることで、日本語としてどのように理解すべきかがかなりの程度吟味された。それに伴って作成中であるチベット語訳と漢訳との対照テキストは日本以外の研究者から再三早期の出版を望まれている状況にある。
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Nagoya Studies in Indian Culture and Buddhism : Sambhasa
巻: 29 ページ: 39-59
Religion and Logic in Buddhist Philosophical Analysis. Proceedings of the Fourth International Dharmakirti Conference, Vienna, August 23-27.,2005
ページ: 491-506